閉経前後の40代~50代を更年期といい、この時期には女性ホルモンの急激な減少に伴って、様々な不調が症状として現れるようになります(図1)。症状は、ほてり、発汗、イライラ、気分の落ち込み、肩こりなど人によってそれぞれですが、これらの症状をまとめて「更年期不定愁訴」と呼びます。更年期不定愁訴は、心と身体の両方に影響して女性の生活の質(QOL)を損うため、QOLの維持を目的とした健康管理をしていくことが必要とされています。
今回の研究では、更年期症状を複数もつ女性を対象に、女性に現れる諸症状の緩和と健康増進を目的として古くから使用されてきた一般用女性保健薬を用いて改善効果を検証しました。
更年期とホルモンバランスの関係閉経前後の更年期には、卵巣機能の低下によって女性ホルモンのひとつ「エストロゲン」が急激に減少していきます。
この突然の変化にからだがついていけず、ほてりやイライラなど様々な不調が起きてしまいます。
研究結果から、今回用いた一般用女性保健薬は代表的な更年期不定愁訴22症状の全てに効果があり、特に不眠,憂うつ,神経質などの精神神経系に有効であることがわかりました。
また、効果が現れるまでの期間は、症状の系統や各症状によって異なることもわかりました。
一般用女性保健薬。
1、総合的な改善度・満足度
更年期症状を4つ以上もち、簡略更年期指数(SMI)が合計40点以上の45歳~55歳の女性21名に被験薬を1回4錠、1日3回毎食後に服用して頂き、服用1、4、8週間後の総合的な改善度と満足度を評価しました。その結果、服用期間が長くなるにつれて評価は向上していき、服用8週間後の総合的な改善度は「やや改善」以上が72%、総合的な満足度は「やや満足」以上が76%の総合評価が得られました。
2、症状別スコアの改善
更年期不定愁訴に対するより詳細な症状別の有効性を検証するために、代表的な更年期不定愁訴22症状について被験薬の効果を確認しました。その結果、服用前に比べて服用8週間後では全症状において症状別スコアの減少がみられ、被験薬は22症状全てに効果があることがわかりました。さらに、各症状を「血管運動神経系」「精神神経系」「運動器系」「知覚神経系」「その他」の5系統に分類したところ、特に「不眠」「憂うつ」「不安感」などの精神神経系に有効であることもわかりました。
3、更年期スコアの改善
更年期不定愁訴に対する総括的な有効性を検証するために、更年期スコア(症状別スコアの合計点)に対する被験薬の効果を確認しました。その結果、更年期スコアは服用前と比べて服用1、4、8週間後に有意な低下を認めました。また、更年期スコアの有効率は72%でした。これらのことから、被験薬は様々な更年期の諸症状全体に幅広く効果を発揮することがわかりました。
4、効果が現れるまでの期間
各症状の効果が現れるまでの期間を検証するために、自覚症状改善度(VAS)の減少値を有効の判定に用いて、有効判定となるまでの最短の服用期間を確認しました。その結果、特に血管運動神経系(「胸のしめつけ」「ほてり」「のぼせ」など)や知覚神経系(「音に敏感」「手足のしびれ」など)においては服用1週間で効果を示す症状がみられました。つまり、高い効果が得られる症状は「不眠」「憂うつ」「不安感」などの精神神経系ですが、早く効果が得られる症状は「胸のしめつけ」「ほてり」「のぼせ」などの血管運動神経系や「音に敏感」「手足のしびれ」などの知覚神経系であることが考えられます。
【用語解説】
簡略更年期指数(SMI)
更年期の症状の程度を判断するものです。10項目の症状に応じて点数を入れ、その合計点をもとにチェックします。
自覚症状改善度(Visual Analogue Scale:VAS)
VASは、対象者の「痛み」や「重症度」を評価する指標としてよく用いられます。100mmの水平直線のスケールにおいて「0」を「症状はない」状態、「100」を「今までで一番強い症状」の状態として、現在の症状の強さが100mmの直線上のどの位置にあるかを示す方法です。